「昔はこのあたりの土地なら、かなり価値があったんだけどね。」
不動産の査定をしていると、こういったお話を聞くことがあります。
実際、昔と今では、住宅を購入する人の家族構成やライフスタイル、予算感、そして土地に求めるものが変わってきています。
例えば、以前は「広い家」「広い土地」「大きな庭」が、良い住宅の一つの条件として考えられていました。
家族が多く、庭で子どもが遊び、車も複数台所有する。
そんな暮らしを想定すれば、広い土地には大きな価値があります。
一方、現在は核家族化や少人数世帯の増加、住宅価格の上昇などもあり、「必要な広さを、必要な分だけ」という考え方も珍しくありません。
土地を購入するときも、「せっかくなら広い土地を」というより、「建物と駐車場を確保できれば十分」「予算に収まる広さで探したい」と考える人もいます。
だからといって、昔の考え方が間違っていたわけではありません。
その時代には、その時代の暮らし方があり、それに合った不動産の価値がありました。
ただ、不動産は長く使われるものだからこそ、「昔は良いとされていたもの」が、現在の市場でも同じように評価されるとは限らないのです。
その分かりやすい例が、「土地の広さ」です。
例えば、100坪の土地があるとします。
単純に考えれば、50坪の土地より100坪の土地のほうが価値が高そうです。
実際、坪単価が同じなら、100坪の土地のほうが売却価格は高くなります。
しかし、買う側の立場から考えてみると、少し話が変わります。
一般的な住宅を建てるのであれば、40~50坪程度の土地で十分という人も少なくありません。
そのような人にとって100坪の土地は、「広くて魅力的な土地」ではなく、「必要以上に大きく、その分だけ価格も高い土地」になってしまうことがあります。
土地が広くなれば、その分だけ購入価格が上がります。
さらに、購入後の固定資産税や維持管理、庭の手入れなどの負担も増えます。
つまり、売主にとっては「広いこと」がメリットでも、買主にとっては必ずしもメリットになるとは限らないわけです。
では、広い土地は昔ほど価値がなくなったのでしょうか。
ここで大切なのが、「広い土地をどう売るか」という視点です。
例えば100坪の土地を、一筆のまま販売するとします。
当然、100坪を必要とする人を探すことになります。
しかし、もしその土地を50坪ずつ2区画に分けることができればどうでしょうか。
その地域で50坪前後の土地を探している人が多いのであれば、100坪の土地を一筆で売るよりも、購入を検討する人の母数を増やせる可能性があります。
そして場合によっては、100坪をまとめて売るよりも、分筆してそれぞれ販売したほうが、最終的な売却価格が高くなることもあります。
もちろん、分筆すれば必ず得をするという話ではありません。
土地の形状や接道状況、建築できる建物の大きさ、造成費用などによっては、一筆のまま売却したほうが良いケースもあります。
大切なのは、「広いからそのまま売る」という一つの考え方だけではなく、「今の買主にとって購入しやすい形にする」という選択肢もあるということです。
これは土地の広さに限った話ではありません。
昔は価値があると考えられていたものでも、現在の買主から見ると、そこまで重要ではないことがあります。
反対に、昔はそれほど注目されていなかった条件が、現在では大きな魅力になっていることもあります。
不動産の価値は、土地の広さや築年数、駅からの距離といった数字だけで決まるものではありません。
「今、どんな人がこの不動産を欲しいと思うのか」
「その人にとって、どんな状態なら購入しやすいのか」
そこまで考えることで、同じ不動産でも違った売り方が見えてくることがあります。
そして、ここが不動産売却の難しいところでもあり、面白いところでもあります。
「昔はこのくらいの価値だったから、今もこのくらいだろう」と考えるのも一つの方法です。
しかし、実際の市場では、思っていたより低く評価されることもあれば、逆に「こんな売り方ができるなら、思っていたより価値がある」と分かることもあります。
だからこそ、売るかどうかを決める前に、一度現在の市場でどのくらいの価値があるのかを確認してみるのも一つの方法です。
査定をしたからといって、必ず売らなければいけないわけではありません。
まずは「今、自分の不動産がどのように評価されるのか」を知る。
そこから、売却するのか、もう少し持っておくのか、あるいは別の売り方を考えるのかを決めても遅くありません。
昔から大切にしてきた不動産だからこそ、昔の価値観だけではなく、「今の市場ではどんな価値があるのか」を一度見てみる。
それが、これからの不動産との付き合い方を考えるきっかけになるかもしれません。